「何を言うか」よりも、「何をするか」が本音を語る
ビジネスや人生においても通じる真理ですが、投資の世界では特にその重要性が際立ちます。どんなに立派な見通しを語っていても、実際にどんな資産にどれだけ投資しているのか──そこに、その人の「本気」が現れるのです。
この原則に基づき、世界一の投資家であるウォーレン・バフェットの行動に注目してみると、現在の景気サイクルの立ち位置と、これからの投資判断に対する重要な示唆が見えてきます。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN033350T00C25A5000000/
「語らずして語る」バフェットの行動
ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年末時点で過去最高の3,340億ドルという現金を保有しています。この現金比率は、テスラやマイクロソフトといった巨大IT企業をも上回る水準です。バフェットは株主への年次書簡で「良いビジネスを現金より好む」と述べていますが、それでも今は**「魅力的な投資対象がない」**と判断し、大きな動きには出ていません。
その行動は静かでありながらも、力強く「今は買い場ではない」と市場に伝えています。
売り始めたアップル株と見送られた自社株買い
バフェットの象徴的な投資先であるApple株も、2024年には保有の約3分の1を売却しました。また、バークシャー自身の自社株買いもここ数年と比較して抑えられています。これには以下の2つの意味が込められています:
- アップル株ですら、割高と判断して利益確定に動いた
- バークシャー自身の株も「今は割安ではない」と見ている
バフェットは本来、「長期で持てる銘柄しか買わない」「割安でなければ買わない」投資家です。彼が利確を進め、再投資にも慎重であることは、現在のマーケットが過熱気味であることを示唆しています。
バフェットの行動は、景気サイクルの「どこ」にいるか?
景気には典型的な4つのサイクルがあります:
- 回復期:金融緩和、失業率低下、株価上昇の始まり
- 成長期:企業収益改善、株式市場活況
- 過熱期:インフレ上昇、金融引き締め、バブル懸念(←いまここ)
- 後退・調整期:株価下落、信用収縮、景気減速
バフェットの現金比率の高さ、割高株の利益確定、保守的な投資行動を考えると、今の米国経済は**「過熱期の後半〜調整期の入り口」**に差し掛かっていると読み取れます。
以下の要素がその理由をさらに強化しています:
- インフレ高止まりと利下げ見送り(金融引き締め継続)
- 財政赤字の拡大(バフェット自身が「無責任な財政政策」と懸念)
- AI関連株を中心とした一部市場の過熱(ナスダック指数の高騰)
私たちが学ぶべき「静かな行動」の意味
バフェットの現金比率の高さは、単なる守りではなく、次のチャンスに備えるための準備です。彼は景気の次の局面、株式市場が下がり「本当に魅力的な価格」になったとき、すぐに動けるようにしているのです。
彼の行動から学ぶべき投資スタンスは以下の通りです:
- 無理にリスクを取る時期ではない
- 一時的な上昇やブームに流されず、次の“安く買えるタイミング”を待つ
- 現金や短期資産をある程度確保し、次の景気回復局面に備える
まとめ:バフェットは“沈黙のうちに”こう語っている
ウォーレン・バフェットは、現在の市場に対して強気でも、過度に悲観的でもありません。しかし、彼の行動一つ一つが、「今は慎重に備えるべき局面である」と私たちに伝えています。
名言ではなく、数字と行動で語るバフェット。彼の現在の投資行動を見つめ直すことは、私たち自身の投資戦略を見直すための最高のヒントになるはずです。