ゴールドは吠え、テックは眠る——インフレの足音に備える投資戦略
2024年末から2025年にかけて、金価格が史上最高値を更新し、米ハイテク株が軒並み下落。
この動きは偶然ではなく、市場が「インフレ再来」を強く意識している証拠です。
この記事では、1970年代のインフレ期と現在の市場を重ね合わせながら、これからの資産防衛のヒントを探っていきます。
金は吠えた。今、何が起きているのか?
- 金価格
- 2023年末:2,063ドル
- 2025年4月:2,410ドル(+16.8%)
- ハイテク株の下落(2025年初来)
- NVIDIA:–18.3%
- Adobe:–21.7%
- ARKK(イノベーションETF):–27.1%
これらの動きは、インフレ・高金利・地政学リスクといった「不安定な時代」への備えとして、守りの資産に資金が流れている証です。
1970年代=「インフレの代名詞」
米国の1970年代は、金融史に残る“インフレの時代”でした。
そのインフレ率(米CPI)は以下の通りです。
📈 1970年代の米インフレ率(CPI前年比)
年 | インフレ率 |
---|---|
1970 | 5.8% |
1971 | 4.4% |
1972 | 3.2% |
1973 | 6.2% |
1974 | 11.0% |
1975 | 9.1% |
1976 | 5.7% |
1977 | 6.5% |
1978 | 7.6% |
1979 | 11.3% |
1980 | 13.5%(ピーク) |
💡 10年間平均で7.4%超のインフレ。
つまり、現金の価値は10年で約半分になったとも言えます。
なぜそんなにインフレが進んだのか?
💰 金本位制の崩壊(1971年)
- 1971年、ニクソンショックでドルと金の交換停止
- 通貨発行の上限が外れ、インフレ圧力が加速
🔥 オイルショック(1973年・1979年)
- OPECが原油供給を制限し、原油価格が急騰
- 物流・製造コストが上昇 → あらゆる物の値段が上昇
🌀 賃金と物価のスパイラル
- 物価上昇 → 賃上げ要求 → コスト増 → 物価上昇…の悪循環
- 景気は低迷する中で物価だけが上がる「スタグフレーション」へ
セクター別パフォーマンスから学ぶ「資産防衛」
1970年代、すべての資産が等しく下落したわけではありません。
実物資産や生活必需品セクターが堅調だったのです。
💹 セクター別リターンとETF例(1970〜1980年)
セクター | 年平均リターン | 特徴・備考 | 関連ETF例 |
---|---|---|---|
エネルギー | +13.3% | 原油価格と連動。70年代はオイル株全盛 | XLE(エネルギー株全般) |
コモディティ | +586%(累計) | 金・原油など現物資産が跳ねた | GLD(金)、DBC(コモディティ全般) |
生活必需品 | +9.4% | 食品・日用品など価格転嫁しやすい | XLP(生活必需品セクターETF) |
バリュー株 | +12.4% | 財務健全・安定配当の企業群 | VTV(米大型バリュー株) |
テクノロジー | +2.6% | 将来利益が金利で割引かれ、不利に | QQQ(ナスダック100) |
グロース株 | +3.1% | PERの高い成長株はインフレ下で逆風 | ARKK(高成長株) |
現代における「インフレ時代の投資戦略」
🛡️ 守りの資産にシフト
- 金・コモディティETF:GLD、IAU、DBC
- エネルギー株ETF:XLE
- 生活必需品株:P&G、コカ・コーラ、Walmart など
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🔍 バリュー株を軸に
- 高成長よりも、安定利益・堅実経営・配当に注目
- VTVや高配当ETF(VYM、HDV)など
⚠️ ハイテク株は慎重に
- 金利上昇時は、PERの高い成長株が割高視されやすい
- 特にSaaSや半導体などは下落余地に注意
まとめ:インフレは避けられない。だが、備えることはできる。
- 金価格の上昇
- 原油高
- ハイテク株の調整
これらは、1970年代と驚くほど似た構図です。
そして今、同じような「インフレの空気」が再び世界を包み始めています。
現金や成長株に偏ったポートフォリオを持つ人は、今こそ「守りの資産」へのリバランスを考えるべきタイミングかもしれません。
🐾「嵐の夜、猫は屋根裏に登らない」
風の匂いを感じ取る者だけが、次の夜明けまで生き残れるのです。