〜世田谷区・武蔵野市から見える、見えないルール〜

「駅近で便利そうな場所なのに、やけに戸建てが大きいな…」
「この街って、なんか“余裕”が漂ってるよね」
そんなふうに感じたこと、ありませんか?
実は、それ、気のせいじゃありません。
街の“空気感”には、都市計画という名のルールが、静かに、でも確実に影響を与えているのです。
敷地最低面積という“見えないハードル”
東京都の一部エリアでは、家を建てるために必要な土地の広さに最低ラインが設けられています。
たとえば「最低でも100㎡以上ないと家を建てられません」といったルールです。
これは表向きには「良好な住環境を守るため」の制度ですが——
言い換えれば、それなりの経済力がなければ住めない街をつくるための、非常に穏やかで公平そうに見える“フィルター”でもあります。
世田谷区:100㎡未満はNGのエリアも
東京23区の中でも人気の高い世田谷区。
この区では、以下のような最低敷地面積のルールが定められています。
- 建ぺい率40%のエリア → 100㎡以上
- 建ぺい率50% → 80㎡以上
- 建ぺい率60% → 70㎡以上
しかも、第一種・第二種低層住居専用地域など、戸建て中心の住宅街では2004年から本格適用。
さらに2019年からはその他の用途地域にも広がっています。
そして忘れてはいけないのが「成城」などの高級住宅地。
このエリアでは、地区憲章により**最低125㎡、推奨250㎡**という、まさに“大邸宅の世界”が標準となっています。
小さく分割できないから、土地のグロス(総額)が高くなる。
=簡単には手が出せないエリアになる。
つまり、**見た目は中立だけど、実質的には“お金の壁”**があるんです。
武蔵野市:住みたい街ランキング常連の理由
吉祥寺を抱える武蔵野市も、敷地最低面積のルールを早くから導入した自治体のひとつ。
- 建ぺい率40%以下の地域 → 最低120㎡
- 建ぺい率50%以上の地域 → 最低100㎡
この基準、都内の住宅地としてはかなり厳しめです。
だからこそ、武蔵野市の戸建て街には“ゆとり”がある。
- 道幅が広く、陽当たりも確保されやすい
- 隣の家との距離が保たれる
- 建てられる家が大きくなる → 所得層が限定される
つまり、「きれいな街並み」「防犯性」「教育意識の高い住民」などのイメージは、制度によって“再生産”されているとも言えるのです。
資産性にどう効く?
これらのエリアに共通する特徴は:
- 土地が細切れにされない → 需給が締まる
- 平均的な土地価格が高止まりしやすい
- 隣の土地も同じルールなので“割安物件”が出にくい
つまり、長期的に見て資産価値が落ちにくい構造になっています。
「グロス価格の高さ」は、資産性の防波堤でもある
実需でも投資でも、「持っているだけで地価が守られる」可能性が高いエリアとも言えるでしょう。
都市計画は誰のため?
都市計画や用途地域の区分けは、一見すると公平で中立な制度です。
でもその裏側には、「誰が住めて、誰が住めないか」を静かに振り分ける構造が存在しています。
- 誰でも住めるように見えて、実は“選ばれし人”だけが住める
- 良好な環境を守るためのルールが、階層の固定化につながる
- そして、そのルールは、あまり知られずに、でも確実に効いている
まとめ:ゆとりある街には、ゆとりが必要
敷地最低面積が設定されたエリアは、
「将来も価値が落ちにくい街」=「資産性が守られる街」として注目されています。
けれどその裏で、“経済力の壁”が見えないかたちで存在しているのも事実。
家を買うとき、投資するエリアを選ぶときは——
- 見た目のキレイさや雰囲気だけでなく
- その街にどんなルールがあり、何を生み出しているのか
にも、少しだけ目を向けてみると、未来の資産性や生活の質が大きく変わってくるかもしれません。